穿孔修復・異物除去
50歳 男性 - 下顎左側第一大臼歯:穿孔修復
1. 術前:髄床底遠心に穿孔が見られ、分岐部歯槽骨内に貼薬剤様不透過像を認める。
2. 術後:近心舌側根管においてもストリップパーフォレーションを生じていたためMTAにて充填
3. 術後:直接法にて支台築造
4. 術後1年1ヶ月:根尖周囲透過像および分岐部透過像の消失を認め経過良好である。
解説:根管治療において髄床底の穿孔は偶発的に生じることがしばしばある。 適切な無菌的処置と封鎖をすれば治癒の可能性が高いが、 穿孔由来の分岐部病変がペリオと関連している場合や、残存歯質量によっては予後不良となる可能性も示唆しなければならない。
39歳 女性 - 下顎右側第一大臼歯:穿孔修復
1. 術前:近心根管中央部近心側に穿孔が見られる。
2. コーンフィット時:穿孔部まではGPで根管充填
3. 術直後:穿孔部より上はMTAで根管充填
解説:当院では穿孔修復の症例が非常に多い。穿通不能な根管への手用ステンレスファイルの押し込みは避けた方が良いだろう。 本症例は根中央部で根管逸脱し、穿孔を生じている。通常であればこれ以降の根管へのファイル挿入は困難であるが、 マイクロスコープ下で適切な形成を行えば困難なく残りの根管を形成することができる。
19歳 女性 - 下顎左側第一大臼歯:穿孔修復
1. 術前
2. 仮封材除去時:穿孔部からの異常出血
3. 根管充填後:根管内はGPで充填し、穿孔部のみMTAで充填
4. 術直後
4. 術後1年2ヶ月
解説:分岐部に透過像がみられる。過剰な切削行為により髄床底は非常に菲薄であり、近心根管口部に穿孔を生じていた。 穿孔は分岐部病変と交通し、分岐部病変は歯肉溝とも交通していた。このような歯周病変と関わる穿孔修復はリスクを伴うが、 本症例においては術後良好である。
56歳 女性 - 下顎右側第一大臼歯:根管内異物除去・穿孔修復
1. 術前:近心根管根尖側にファイル破折片と思われる不透過像が見られる。
2. 仮封を除去すると既存の隔壁直下に髄床底穿孔が見られる。
3. 髄床底穿孔を避けるように隔壁を新製したところ。
4. 破折ファイル片は二次破折したが全て除去することができた。
5. 根管内破折ファイル片除去後のレントゲン写真
6. ネゴシエーションと作業長の決定
7. 髄床底穿孔部はMTAにて充填した。支台築造直前。
8. 支台築造した治療完了時
9. 術後15ヶ月 経過観察時
解説:本症例では破折ファイル片に注目してしまうが、感染経路の遮断と感染壊死組織の除去の方が重要性が高い。 根管内異物が除去できなかった場合の対処法や、除去するにあたってのリスクも術前に説明している。 経過観察においては分岐部病変の治癒も見られる。